「経営とITの融合を目指して」

最優秀賞に
野村HDとミスミグループ本社

山内 雅喜氏

企業情報化協会会長

山内 雅喜

(ヤマトホールディングス株式会社参与)

生成AI(人工知能)をはじめとするIT(情報技術)のさらなる普及は、企業の経営スタイルを刷新することにとどまらず、社会を新たなステージに導く。公益社団法人企業情報化協会(IT協会)では、ITを経営革新に役立て、社会貢献に寄与する企業・団体を表彰する「IT賞」を1983年に制定。先ごろ、2025年度の受賞企業・団体40件を発表した。同協会の山内雅喜会長に総評などを聞いた。

IT賞

IT賞を主催する企業情報化協会は1981年、社団法人(現一般社団法人)日本能率協会から部門が独立するかたちで設立された。同協会は内閣府所管の公益法人として、特定の業種に限定されず広くITマネジメントに関する情報発信や支援を行っている。また「経営とITの融合を目指して」を掲げ、調査研究を通じて産業界のIT活用・普及促進に取り組んでいる。

山内会長はまず多様化、複雑化、迅速化する経済社会の中で、協会が果たすべき役割を訴えた。

「グローバル化の進展やセキュリティーの重要性の高まり、サステナビリティーの要請など経済社会は急速に変化しています。こうした中で当協会の役割はITを経営の力として生かし、企業と社会の持続的発展を支えることにあります。AIやデータ、デジタル化などITを単なる手段ではなく経営革新の中核と位置付けることが重要です。当協会では研究会やシンポジウムを通じて先進的な事例や知見を共有し、ITを活用した社会課題の解決を通じて人と技術、企業と社会を結ぶ『信頼の架け橋』を目指して活動しています」

山内 雅喜 氏

企業情報化協会会長

山内 雅喜

(ヤマトホールディングス株式会社参与)

ITマネジメントの鍵は「人」

協会の活動領域の柱の一つに「ITマネジメント推進活動」がある。毎年初めには「IT戦略総合大会」が開催され、IT賞受賞企業、企業経営者、有識者などの講演が行われる。ITマネジメントで重要視すべき観点とは何か。

「設立当初より『経営とITの融合を目指して』を事業ドメインに挙げてきました。ITはもはや事業の成長と不可分である経営資源です。経営層がその重要性を理解し、ITを将来の価値を創出する投資と捉えることが大切。ITマネジメントの鍵を握るのは、システムでなく『人』の力です。最終的に変革を実現できるのは人と組織。それを生かす経営層の意思も欠かせません」

成果たたえ、広く知見を共有

協会の重要な取り組みがIT賞だ。ITを活用し、業務改革に成果を上げた団体をたたえる表彰制度で、83年に創設されたOA賞から数えて今年で42年を迎えた。上場企業をはじめとする企業・団体からの応募は年々増加しており、今年の受賞は過去最多の40事例に。応募の内容も従来の業務効率化から裾野が広がり、顧客体験の刷新、新サービスの創出、さらには持続可能性、環境対応などが受賞例に並ぶ。

現在、IT賞のカテゴリーは「経営·業務改革」「顧客価値·サービス革新」「社会·環境価値の創出」「共創·エコシステム構築」の4領域。IT賞審査委員会による書類・ヒアリング審査をへて、最優秀賞・優秀賞が選出される。また、受賞団体から推薦のかたちで「Super SE 100人衆」と題する個人表彰も制定されている。

「IT賞は成果を上げた企業をたたえるにとどまらず、広く知見を共有して日本全体のIT活用力を高めることを目的としています。とりわけセキュリティーの領域などは、競合企業であろうとも情報と技術を共有し、社会全体で守ることが必須です。IT賞は社会的透明性、公益性が高い表彰制度です。受賞した企業・団体の実例や成果を一人でも多くのビジネスパーソンにお届けできるよう今後も発信してまいります」

IT賞審査委員会について

13人の審査委員で構成。学識経験者や企業経営者、ジャーナリストなどITに精通する様々な分野の専門家が名を連ねる。審査委員長は計算機科学・ソフトウエア工学の研究者である慶応義塾大学名誉教授の萩野達也氏。賞の選考は書類審査(1次審査)とヒアリング審査(2次審査)によって実施される。

受賞企業一覧

表彰名 受賞企業・受賞テーマ
最優秀賞
(経営・業務改革領域)
野村ホールディングス株式会社
最優秀賞
(顧客価値・サービス革新領域)
株式会社ミスミグループ本社
優秀賞
(経営・業務改革領域)
株式会社アイシン
関西電力株式会社
ニッセイ情報テクノロジー株式会社
株式会社博報堂DYホールディングス
メットライフ生命保険株式会社
優秀賞
(社会・環境価値の創出領域)
NTT東日本株式会社/NTT西日本株式会社/NTTドコモソリューションズ株式会社
MS&ADインターリスク総研株式会社
IT賞
(経営・業務改革領域)
株式会社オープンハウスグループ
ソニー銀行株式会社
鉄道情報システム株式会社/グローリー株式会社
西日本旅客鉄道株式会社/株式会社JR西日本ITソリューションズ
日本アイ・ビー・エム株式会社
日本電気株式会社
パーソルホールディングス株式会社
株式会社ライズアップ
IT賞
(顧客価値・サービス革新領域)
SMBC日興証券株式会社
NSW株式会社
株式会社三井住友フィナンシャルグループ/株式会社三井住友銀行/三井住友カード株式会社/株式会社日本総合研究所
三井不動産株式会社
楽天グループ株式会社/楽天モバイル株式会社
IT賞
(社会・環境価値の創出領域)
株式会社井上デザイン
東急不動産ホールディングス株式会社
奨励賞
(経営・業務改革領域)
MS&ADシステムズ株式会社
オリックス生命保険株式会社
SOMPOシステムズ株式会社
株式会社テプコシステムズ
株式会社デンソー/株式会社プラスアルファ・コンサルティング
東京海上日動システムズ株式会社
日本生命保険相互会社/ニッセイ情報テクノロジー株式会社
三井ダイレクト損害保険株式会社
三井不動産株式会社
三菱HCキャピタル株式会社
奨励賞
(顧客価値・サービス革新領域)
MS&ADシステムズ株式会社/三井住友海上火災保険株式会社/あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
白銅株式会社
奨励賞
(社会・環境価値の創出領域)
SOMPOシステムズ株式会社/SOMPOチャレンジド株式会社/株式会社ポンデテック
東日本旅客鉄道株式会社
奨励賞
(共創・エコシステム構築領域)
FWD生命保険株式会社
関西MaaS協議会/西日本旅客鉄道株式会社/株式会社JR西日本ITソリューションズ

受賞内容紹介

最優秀賞(経営・業務改革領域)

ITのグローバルオペレーティングモデルへの取り組み
~野村ITのグローバル化と生産性革新への挑戦~

野村ホールディングス

堀 晃雄 氏

野村ホールディングス株式会社
執行役員 グループIT兼
トランスフォーメーション担当

堀 晃雄

グローバルな金融サービスを進める中で、複数の開発ベンダーにより様々な技術でシステムが構築され、同社でも維持管理コストが増加した状況を受け、業務や開発の効率性を一層高める改革を進めた。具体的にはシステム開発の内製化や迅速な開発体制、インフラのグローバル標準化を推進。グローバルのIT専門性を活用し各地域のIT運営を強化しビジネスを支える横断的なグローバルマトリックス型の組織を構築している。その集大成として、開発の生産性を高め、グローバルなチームとして業務が遂行できるITオペレーティングモデルを実現したことが高く評価された。

創立100周年の節目の年での受賞に担当役員の堀晃雄氏は「IT組織の社員の励みになり、エンゲージメントの向上にもつながります。組織のグローバル化に取り組む企業の参考になれば幸いです」と話す。IT施策の社会的意義が垣間見える受賞となった。

最優秀賞(顧客価値・サービス革新領域)

ものづくりプロセスの新部品調達サービス
「D-JIT」「MISUMI floow」

ミスミグループ本社

山本 智博 氏

株式会社ミスミグループ本社
本社執行役員
DJシステムモデル開発・ハブ 代表役員

山本 智博

同社は製造業界が直面する人手不足、材料費や人件費の高騰といった構造的課題の改善が期待できる2つの調達サービスで高評価を得た。「D-JIT」は必要な時に、希望数量の部品が入手しにくいという顧客の悩みを解決する。国内外のサプライヤー在庫情報をミスミの基幹システムと連携し、EC上で部品の即時発注を完結させることを可能とした。「MISUMI floow」では工場の工具や備品など後回しにされがちな生産間接材調達のデジタルトランスフォーメーション(DX)を進め支援。専用自販機の導入などにより、煩雑な在庫調達・管理から顧客を解放する。

新たなビジネスモデルの開発に携わる山本智博氏は、「現場の困りごと解決を目的に両サービスともハイテクとローテクを顧客ニーズと融合させたことで成果に結びついています。今後もITを武器に、非効率が点在する製造業のプロセス革新に貢献してまいります」と受賞の感想を述べた。

優秀賞(経営・業務改革領域)

アイシン

グローバル12万人をつなぐチケットプラットフォームによる変化と成長

取締役社長 吉田 守孝 氏

吉田 守孝 氏

関西電力

挑み続ける関西電力。
~生成AIで切り拓く、AI産業革命を見据えたDXビジョンの実現~

取締役 代表執行役副社長 荒木 誠 氏

荒木 誠 氏

ニッセイ情報テクノロジー

クラウド基盤と外部認証サービスの活用による
顧客接点の革新プロジェクト

代表取締役社長 岸淵 和也 氏

岸淵 和也 氏

博報堂DYホールディングス

HCAIによるHDYグループのAI改革−AIメンタリング制度による経営層DXと8500名の創造性解放

代表取締役社長 西山 泰央 氏

西山 泰央 氏

メットライフ生命保険

戦略成果を加速するAgile Delivery Model(ADM):メットライフのアジャイル変革

代表執行役 会長 社長 最高経営責任者 ディルク・オステイン 氏

ディルク・オステイン 氏

優秀賞(社会・環境価値の創出領域)

NTT東日本/NTT西日本/NTTドコモソリューションズ

PSTNからIP網への移行(PSTNマイグレーション)の完遂

NTTドコモソリューションズ 執行役員 北田 祥規 氏

北田 祥規 氏

MS&ADインターリスク総研

被害認定のための現場調査効率化アプリ
「損害割合カリキュレータ」による災害対応支援

代表取締役社長 宮岡 拓洋 氏

宮岡 拓洋 氏

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第41回IT戦略総合大会ITMC2026

公益社団法人企業情報化協会(IT協会)の年次大会として開催。
業界トップ企業による基調講演やIT賞の表彰式典、受賞記念講演などが催される。

企業情報化協会の事務局メンバー。
企業情報化協会の事務局メンバー。

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